古典的分析化学から現在の分析化学へ

● 古典的分析化学

分析化学が扱う学問領域を端的に表現すれば,「計測を目的とする試料中から,目的成分を分離・濃縮し,化学的手法,分光学的手法を用いて物質量を決定する」ことになります.
広範な分析化学の中で,「目的成分の分離・濃縮」は分離分析,「化学的手法」は化学分析,「分光学的手法」は分光分析,「物質量の決定」は定量分析に対応しています.
分析化学の各手法によりきちんとした測定がなされ,信頼性の高い定量値が出されるので,身の回りの物質の安全性等が保証されます.
また,微量〜極微量成分をモニタリングし,それら成分量を精密に制御することで,機能性物質の機能が発現しています.

● 現在の分析化学へ

分析化学 = 化学的な計測の手法 により,多様な目的に応じた様々な分析化学が拡がっています.
現在,分析化学の領域で進められている研究例を以下に記します.

  • 低濃度の測定:一分子検出
  • 化学種形態別分析
  • 物質量の測定から活性の計測へ
  • 閾値分析,簡易分析
  • 測定対象物質の選択的な物質分離
  • 顕微鏡技術を活用する微小領域の分析
  • 高機能化,高感度化を目的とした分析機器の開発
  • ゲノム解析,プロテオーム解析などの網羅的分析

分析化学と環境化学との接点

 地球環境を知ること,生命を知ること,ものを創ることなど,これらは現代社会において極めて重要なテーマです.この時,僕らは何を指標に把握したり,評価したりするのでしょうか?
 物質の特性・挙動を理解するためには,濃度・組成・化学形態を含めて,物質がどのように移動し,変化するのかを正確に把握する必要があります. 環境に関わる物質は,その量・濃度がごくわずかでも深刻な影響を及ぼす場合もあり,精度よく,高感度に測定することが要求されます.

分析化学は,計測を通して,環境,生体,材料における,物質の質的・動的挙動を把握することを主題とする学術分野です.
対象とする物質により新しい測定法が必要となる場合もあり,化学の力を活用して新しい分析法として組み上げていく研究分野です.


当研究室における分析化学研究・環境化学研究

私たちの研究室では,「化学計測」をキーワードとして,化学のあらゆる分野と関係する「分析化学」を基盤として,「攻め」の姿勢で化学系の多くの研究分野と共同しながら幅広い研究を行っています.

● 環境対応型のグリーン分析化学

環境計測を目的の一つとする分析化学が,環境に負荷を与える分析法を用いるのならば,本末転倒です.
環境に負荷を与えない物質を用いる分析法エネルギー・資源消費の低い分析法の開発−グリーン分析化学−を目指して研究を進めています.水系溶媒で可能な分析法の開発はグリーン分析化学の一つの方向性です.
目的実現のために新しい物質をつくるのではなく,既存の物質を上手に組み合わせて目的を達成する「システム論的手法を得意としています.

● 分離分析法を活用する物性分析

現在,多くの分析機器が開発され,科学者は比較的容易に機器分析を行えるようになってきました.
便利な分析機器も,ブラックボックスのまま使っていては,装置の機能を十分に引き出しているとは言えません.
分析機器の中身を理解してはじめて,機器の最高の性能を引き出し,機器の新しい利用法を開発することができます.
分離・定量を目的とするクロマトグラフィーの手法を用いて,物質の反応性に関する物性分析に活用する研究を進めています.

● 簡易計測法・簡易計測装置の開発

環境試料,生体試料を扱う時,まず初めに「正常か異常か」を迅速に判断する必要があります.異常があった場合にはその次に精密分析にかけることになります.
正常か異常かを迅速に判断する手法として,簡易計測があり,当研究室ではマイクロ流路・蛍光法を用いる簡易かつ小型定量装置の開発を進めています.

● 分離濃縮法の開発

資源・エネルギーの有限性から,廃棄物から有用な金属元素を選択的に回収する技術が望まれています.
当研究室では,高選択的かつ低環境負荷レアメタルの高度な分離精製技術の開発を進めています.

● センシングデバイス,電極材料の開発

生体系が有する効率的な電子授受の機能を,物質のセンシングデバイス,エネルギー変換の電極材料として活用する研究を進めています.
耐熱性酵素を利用した長期利用可能なバイオセンサの開発,表面改質剤および薄膜としての高分岐ポリマーの活用を進めています.
また,タンパク質の結晶構造に着目し,タンパク結晶を用いた高度に規則構造を維持した多孔体の創製に挑んでいます.