宇宙での長期間の実験にも耐える安定性を確保するため、1. 緩衝溶液を変更して、2. 長期保存試験もクリア(Yoshihisa Suzuki, et al. Modern Physics Letters B in press)し、3. 化学固定結晶に再成長した状態でISSへ輸送することで、ついに高精製GI(純度99.9%)の結晶成長界面のその場観察に成功しました(2019年)。 ![]() GIの純度を99.9%まで上げると、宇宙と地上の違いは対流の有無だけの違いになります。従来は、「宇宙では対流がなくなり、ゆっくり成長するからきれいな結晶になる」ということがまことしやかに言われていました。しかし、実際に分子一つの高さ段差であるステップの前進速度Vstepを上記右側の写真の干渉縞から測定したところ、地上と宇宙で違いがないことがわかりました(Yoshihisa Suzuki, et al. Cryst. Growth Des. 22, 7074-7078, 2022.)。これは、実用的には、 99.9%まで精製すれば宇宙でも地上でも結晶の品質が変わらないことを示しています。 ![]() AdNano missionでは、高精製サンプルののち、結晶の品質を下げる最大の原因と言われる、異種タンパク質(ここではHEWLとヘモグロビン)の共存状態での結晶化その場観察も行いました。2017年のフライト以降、合計5回の打ち上げを経て、2023年度で軌道上実験を終了しました。その結果、共存タンパク質の分子量がGIよりも小さいと、 宇宙でVstepが減少する傾向がありました。現在最終報告会に向けて論文を作成中です。 |