研究

研究概要

私たちの生活は,医薬品,農薬,化学肥料,合成繊維、プラスチックなど様々な有機化合物に支えられて成り立っています。私たちの研究グループでは,これらの有機化合物を効率よく,環境にやさしい手法で合成するための反応の開発を行っています。また、これらの反応を活用して,今までにない新しい機能を持った有機化合物や有機材料の合成とその機能評価を行っています。

~特設!高校生のための研究紹介~

酵素類似活性種を効率的に活用可能な有機分子触媒の開発

自然界には酸化還元反応を司る様々なフラビン酵素が存在します。それらの活性中心はフラビン環とよばれる金属を含まない複素環部位であるため,フラビン環を有する単純な有機分子を用いてフラビン酵素機能を再現し,これを有機合成に活用できれば,環境負荷の軽減やレアメタルの枯渇・高騰といった社会的問題解決への貢献が期待できます。しかしながら,フラビン環由来の活性種は非常に不安定なものが多く,分子設計を工夫しなければこれらを効率的に生成・活用することはできません。
私たちは,タンパク質の構成単位であるアミノ酸を数種類選出し,人工的にフラビン分子に組み込むことで,哺乳類の肝臓など自然界に広く分布するフラビンモノオキシゲナーゼに類似した酸化触媒活性を発現するペプチド含有フラビン(フラボペプチド)の開発に成功しています。また,菌類などの生体内でDNAの修復に携わるフォトリアーゼから着想し,フラビン環の可視光吸収特性を活かしたフォトレドックス触媒反応の開発,ならびにその光励起活性種を高効率利用するためのフラボペプチド触媒の設計に取り組んでいます。その他にも,フラビニウムレジン触媒高分子固定化フラビン触媒光誘起フラビン酸触媒など,様々な関連研究を進めています。
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官能基集積化や非共有結合修飾による設計・立体制御を志向した不斉触媒の開発

キラルな分子の一方の光学異性体(右手分子か左手分子のどちらか)を有機化学反応によって選択的に作り分けることのできる不斉触媒の開発は,生理活性物質を扱う創薬技術などへの貢献が期待される合成化学の重要課題です。私たちは,触媒の活性中心となる官能基を分子鎖に集積化させたり,置換基の導入に非共有結合を利用するなど,一風変わった不斉触媒の設計に取り組んでいます。これらの手法を取り入れることで,例えば従来よりも簡便かつ迅速に,豊富なバリエーションから基質に応じた最適な不斉触媒をオンデマンド設計することができます。
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炭素―炭素累積二重結合分子の反応開拓

炭素―炭素二重結合が3つ以上累積した炭化水素化合物はクムレン(cumulene)とよばれ,剛直な直鎖構造という特徴的な構造をもつことから,その性質や反応性に興味が持たれています。私たちは,このような累積二重結合分子の特異な反応性に着目し,新たな分子変換手法の開発を通じた高付加価値化合物群の創成に取り組んでいます。
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Eur. J. Org. Chem., 2021, 235-238 (2021).Cover Featureに採択されました。)
Org. Biomol. Chem., 19, 7594-7597 (2021).

光機能性有機分子材料の開発

光機能性有機分子材料は有機ELや色素増感型太陽電池など産業分野への応用だけでなく,生体組織や細胞の可視化や光がん治療といった生命科学分野への応用も可能であり,その基礎および応用研究は重要な研究課題です。私たちは,含窒素芳香族複素環化合物を基本骨格とした新たな発光性有機分子を開発し,外部刺激に応答するセンシング材料,バイオイメージング剤,および光がん治療薬剤としての応用研究を行っています。
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Asian J. Org. Chem., 7, 1614-1619 (2018).Front Coverに採択されました。)
ACS Med. Chem. Lett., 10, 1110-1114 (2019).
RSC Adv., 11, 26403-26407 (2021).

その他にも,以下のような研究を行っています。


研究室

研究室は化学・生物棟の4階と6階,機械棟の4階にあります。
南川教授の居室は総合科学3号館3S10室にあります。

総合科学3号館3S10

 南川教授室

化学・生物棟615

 荒川准教授・学生居室

化学・生物棟407

 八木下准教授室

化学・生物棟411

 学生居室

化学・生物棟614

 実験室

化学・生物棟404

 実験室

機械棟401

 実験室

化学・生物棟413

 測定室:UV・蛍光・CV・ボールミル反応装置

化学・生物棟616

 測定室:レオメーター・UV・HPLC・FID・旋光計